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岩根橋駅

車で向かう道すがら、トイレにいきたいと息子が言うも、コンビニすら見当たらない。
第一に店らしいものもなく車通りも少ない。

一時間程走ると、その駅は現れた。
小さな小屋のような駅舎。
無人駅だ。
駐車場が数台分あったので、そこに車を停める。
助手席のドアを開けトイレに走る息子。
僕は湿ったアスファルトに足を降ろし、霧がかった緑の深い山を見上げる。雨は上がったが、あいにくの天気。
曇り空が寂しさを掻き立てる。
電車の来る気配がしない。

「それで、家はどこなの?」
とたずねると電話口で父が、
「家はもうないよ。あなたのお爺さん、つまり私のおやじがですね、ここあたりの山の中に昔小屋を建ててね、そこに中学まで住んでたの。」
「それってどこあたりか分かる?」
「さあ、昔Google earthでこの辺りかなって見たけどさ、多分車じゃ無理だし、行った所でもう何の跡形もないよ。」

「そっか…」
携帯を耳に当てたまま、辺りを見回す。
山って言ったって、
山しかない。

何もないホームを歩く息子をしばし眺めながら、
僕は幼い父の姿を思い描こうとしていた。
1950年代の風景。



「本当に何もないなあ」と僕、
「何もないねえ」と息子。

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