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To say Good bye is to die a little.

その昔、
JUDY AND MARY
というバンドがあった。
例えば今夜みたいに暑くて眠れない夜の事
夕方セブンイレブンで弁当と一緒に買ったミラービールを飲みながら、
僕はあの日、扇風機の風を顔面に当てて、下宿でだらだらとテレビを見ていた。
若い頃のナインティナインや鈴木紗理奈、武田真治や光浦靖子がソファに座って楽しそうに話している。
あの番組のオープニングやエンディングは、
いつもJUDY AND MARYだった。
だから、あのバンドの曲を聴くと、
別にその頃好きで夢中になったりしなかったにしても、
ふわぁって立ち昇る何かがある。
90年代半ばの空気感。
授業の休み時間、
駅前のラーメン屋のテレビに映っていた巨大な岩。
トンネル上に落っこちたその岩盤はあまりに大きすぎて、周りと縮尺のバランスがズレてしまっていた。
客のいない学食。50円の半ライスと80円のコロッケで遅めの朝食。テレビに映る山本文郎と渡辺真理。機動隊がカナリアの籠を持つ。
ステファングラッペリが来日したのもこの頃だった。
テレビ朝日のニュース番組の合間に流れるCMでニールセダカの「雨に微笑みを」を弾いていた。
確か煙草のCM。
キャスターマイルドは、下宿のカセットコンロで火をつけると、カフェオレみたいな甘い香りがした。

当時、僕の周りにはいろんな人がいた。
オケの同期や先輩後輩、指揮者の先生やら大学教授、画材屋のおばちゃんにカウンセラーの先生、下宿の管理人やバイト先の人。

当時それぞれが当たり前のようにそこにいた。
あの人々は、いったい何処へいってしまったのだろう。

別に、場所や立場は変わったとしても、何らかの事情で亡くなっていなければ、それぞれの場所でそれぞれに生きているだろう。
確かにそうなんだけど、僕が言いたいのは、そういうことじゃない。
当時テレビで楽しそうに笑っていた、ナイナイの二人や光浦靖子は今でもちゃんとテレビに出ている。

当時関わりのあった友人に会う事は大きな喜びである。あの時代に自分みたいな人間と関わってくれた事に心から感謝したいと思う。同窓会とかで会ったら懐かしい気分にもなるだろうし、元気そうにしていたら当然嬉しい。

ただ僕はどこかで思ってしまう。

当時の彼、彼女は今はもういないのだと。

人は日々代謝を続けて行く。
細胞は周期的に生まれ変わり、ある程度の個人的同一性を保ちつつ更新されてゆく。

僕が見ていたあの人は本当の意味では、
実はもうどこにもいないのではないだろうか。

その時々で
同じ空気を吸いながら同じ時間を共有し、
出会った事で場を同じくした。
でも時間とともに、
時代は変わり、
生活も変わる。
生物学的に死んではいなくても、
時間的には死ぬのかもしれない。
もちろん新しくどんどん生まれ変わった末のことなのだけど。

一期一会という言葉は、実に重い言葉だと思う。
歳を重ねながら、僕らは誰も、それまで当たり前にあった時間が刹那であることに、いつしか何となく気付く事になる。
僕を通り過ぎた人は、今現在生きていて、自由に再会できるとしても、厳密にはもういないのだ。

いるとするならば、
それは個人の記憶の中に住んでいるのかもしれない。

人は生物学的に死んでしまっても、関わりの中では生き続ける。
それはコンサートの余韻にも似ている。
その日のアンコールの最後の和音のように、
じっくりとその人の中に余韻を残す。
その余韻とともに人は生きて行く。

他者と自己との出会いは、ほんのさわり。
実はその関係の大半は、
別れた後に、それぞれの自己の中で処理され熟成されていくものなのかもしれない。

そう考えたら僕らはたとえ身近な人とであっても、
毎日別れを経験しているのかもしれない。
いつだって、出会いと別れを経験している。

今を過去の蓄積だと不用意に信じるのは、あまり賢いやり方ではない。
毎日の蓄積と同じ車線で、毎日が独立している感覚も走らせているイメージの方が、むしろ本質に近いような気がする。

以前親しかった人と、なんらかの事情で別れてしまう事は誰にでもある事だと思う。
それは恋愛についての事かもしれないし、友人関係の事かもしれない。死別かもしれない。
さよならだけが人生だとは井伏鱒二の言葉。
しかし別れの後も、個人個人の心中では、
関係は続いて行く。
それを後生大事に袂に入りきらないくらいに抱えながら、全部持ってあの世に行く人もいる。




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