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スコアリーディング

アマオケにいた頃、
柄にもなくコンマスをやっていた事がある。
まったく無謀も無謀。
今思えば恥知らずもいいところだ。
その頃、馬鹿なりに発表会の曲のスコアを買って、
しこしこと読んでいた。

楽典の知識は、
もともと系統だって教育されていない。
スコアリーディングについて初めて習ったのは、
山梨の大学オケで、
楽器を手にして間もない頃。
当時オケが音楽監督として依頼して
トレーニングをうけていた指揮者が、
団員向けに楽典講座とか、スコアリーディングとかのレクチャーをしてくれていた。
穴埋めプリントまであって、
それをもとに先輩から指導されながら、
夜中の大学の講義室で、
ちょーたんたんちょーちょうたんたん
とか唱和していた。

ドミナント、サブドミナント
平行調、同主調

本業であるはずの機械工学そっちのけで
いかれたみたいにやっていた。
その時代、その大学オケは留年率が非常に高く、
教授陣から批判の目が向けられていた。
本業に背を向けて、
一種のゲリラみたいな存在。

馬鹿といえば、馬鹿の一言で片付けられる事柄。
大人の目線から見れば、
馬鹿だと、それだけの事だけど、
本業から離れた所で夢中になれる場所ってのは、
確かに危険だけれど
魅力的ではあるのもまた確かである。
この怪しさを知ってる事は、
その後の人生をたくましく乗り切る燃料くらいにはなると思う。
僕は今、実感を持って断言するくらいの自身は持ち合わせている。

スコアリーディングの知識は、
そんな夜のゲリラ的な教育によって身につけた。
あとはほぼ独学。
勿論その後も場所は違えども、
学生オケにはいたから、
みんなで依頼した指揮者の先生から、
いろんなことを学んだ。

系統立ててアカデミックには学んでないけど、
例えば、代々畳屋をやっている家の小僧が、
跡を継いでしばらくして、
ああそういや親父が昔あんなこと言ってたなあって
ふと思い出すような程度の、
つまりは整理されない形での知識は摂取していた。
きっとそれは価値ある原石だったはずだが、
本来の価値を発揮できる可能性は、
その後の運命に丸投げだったような、
つまりは大事なことを紙に認めて、
それこそラムの瓶に詰めて無人島から海に投げ捨てるような、そんな未来への無責任な投資だったのかもしれない。

アマオケで僕は、
そんな知識を引き出しに、
あとはヤマハで買った本だとかを頼りに、
拙い知識で
ベートーヴェンやモーツァルトのシンフォニーだとかを、ひたすら読み込んだ。

断言できるが、アカデミックな教育を受けてない身であっても、ベートーヴェンのシンフォニーは、最高に楽しい読み物だと思う。特に第九は最高だ。
ベートーヴェンは作品に誰もが納得できるような説得力を持たせようとしていたと思う。
それがスコアから立ち上がろうとする時、
彼がみんなに分かってもらおうとする意思が、
100年以上の時を越えて、まだ生きているように感じられた。一種の生きた祈りみたいなもの。
こんなズブの素人ですら感動するんだから、
遠い国の、昔々の人なんだけど、
やっぱりベートーヴェンは偉大だと思う。

さて、今夜僕は
ベートーヴェンではなくて、
ジェローム・カーンを読んでいる。
ALL THE THINGS YOU ARE
変な曲だ。
72小節中8回も転調している。
(8回という数は正しいかどうかわからない。例のごとく素人の判断で不器用にやった作業の結果だから)
アドリブを一本の線で作るには、この転調の波を綺麗に乗り越えるスキルが必要なんだけど、
それにはやっぱり、こうした分析が必要なんだなあと、あらためて思う。
autumn leavesなんて、テーマの雰囲気とキーのスケール、あとオカズのブルーノートでとりあえずは様になるけれど、
この曲はそうはいかない。でも、うだうだコードネームを眺めながら、ドミナント探して、これかなどうかなってやるのも、何だかんだいって楽しい気晴らしだと思う。
なんてったって、ALL THE THINGS YOU AREは名曲。
すごくモダンで都会的な響きが、どんな仕組みで出来ているのか、気になるといえば気になるのです。
スタンダードナンバーだし基本的な曲だから、
ネットを検索したら、解釈なんて沢山書いてあるに違いないけれど、
楽譜とにらめっこで、自分なりにやってみるのは
趣味としてはなかなか楽しい。
音階練習は、いつも全調でやってきたけれど、
これは転調の多い曲をやる時かなり力になる。
あと、三種類のディミニッシュ分散和音が、
こんなにも便利なもんだとは思わなかった。




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