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夢十夜5

知らないうちに、
僕らの行動は、
どこか大きな力によって、
そう、
知らないうちに、
決められてしまっている。
それでも、
何食わぬ顔で、
毎日生活できているから、
別段不都合は感じないのだけれども。

昨夜、夢の中で
僕は、無実の隣人の後頭部に、
手にした黒い拳銃の
冷たい銃口を突き付けた。
それに至るは、
目に見えない何かの力による、
無言のなりゆき。
これは、なりゆきとしてなされた事なれど、
さっきまで談笑せし、かの女の表情は、
一瞬のうちに青白くなり、
我を見つめし目の輝きは、
その訳を問いただす。
それに対する答えを、
自分の内に探すも、
一向に見つからない。
あるのは、ただ、
成り行きとして、そうせざるを得ないという事のみ。
これが、いにしえより受け継ぎし、
我が国の民族の在り方よと言うが早いか、
脳裏にもう一つの考えが浮かぶ。
この成り行きの中で、
何か抜け道はないだろうかという問い。
この眼前のうら若き女性を救いたまふ画期的な策略。
それは肩擦る程の隙間を通り抜ける程なる狭い通路なれども、
そこに身を投げ打つか、はたまた大きな流れの一部として、その重金の引き金を引くべきか。
その時ふと思うは、
人一人の、いかに小さきこと。
彼女と僕が、今押しつぶされようとしているのは、
悪意のある何処かの誰かではなく、
個々人としては、取り立てて何の悪意も見出せぬ集団の力なのである。
敵は、誰それであればよいものの、
僕らは、その悪意なき者が、個々人が気づかぬ内に身に宿したる強大な毒のような物によって、潰されてしまうのである。それは、しばし前にテレビで見た、広大な田園を高速で溯上する真っ黒な波の様でもある。
その中で、銃口を構えた僕は、
引き金を引く覚悟と同時に、
彼女をはじめとする数十人の命を解放する孤独な決断に想いをはせる。
この銃口を、コンマ数秒のうちに右隣数十メートル先の憲兵に向け、銃弾を発射し、同時に屈んで左斜め前の憲兵の頭部にも撃ち込む。
狭い廊下を逃げる事は、当然危険を伴うが、その5メートルを走り抜ければ、林に散る事ができるかもしれない。
僕はそれを面にも出さず、
じっと、拳銃の先と、そこにある彼女の後頭部、短い髪の下のうなじを見つめる。
どうするかは、自分次第。
目の前には、大きな大地がある。
集団の中にいると、見えないけれど、
僕らの前には、いつもこの大いなる孤独があるはずだ。
なんて思っていたら、
目が覚めた。

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