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昔話

僕は今の実家のあるこの土地に、四歳で越してきた。当時まわりに住むのは昔からの人ばかり。
なにせ同級生のうち三人は、お互い割と近しい親戚同士という、田舎ではよくある事だ。
だから友達の家に遊びに行くと、その家のおばちゃんに「ああ、○○さんとこの隣に越してきた、会社員の子か」とよく言われた。
その言葉通りに、おばちゃんにとって僕は、○○さんの隣にきた家の子であり、農家でなく、その土地では比較的珍しい、会社員の家の子だったのだ。
僕の父親は岩手の山奥の生まれで、母は名古屋の街で育った。いわゆる「よそ者」ではあったが、当時その事で辛い思いをした記憶はない。
この土地の人は子どもも大人も大らかで寛容だった。当時はそんな事分かんなかったけれど。
近所に住む、声の大きなおばちゃんは、今でも顔を見ると声をかけてくれるし、こんな人付き合いの苦手な人間を気にかけてさえいてくれる。
そんな温かい場所に暮らしていながら、
それにもかかわらず、
幼い僕は、何処か馴染めない気持ちを残していた。
自分は他の子たちと、なぜ違うのだろうかという、ぼんやりとした気持ちが、幼少期の心に、いつしか密やかな居場所を築いていた。
今となっては笑い話だが、僕は小さい頃「みにくいアヒルの子」を愛読していた。何度も何度もしつこいくらいに読んでいた。あのキュッと締め付けられるような、甘えたい年頃の幼児が抱くあの感傷的な気分に酔いしれながら、夕焼けの西陽のあたる部屋で、一人本棚の前にうつむいて。


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