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見えるもの、見えないもの

日曜の午前10時
やってきた列車に乗り込むと、
入口付近の座席を3人分くらい使って、一人の中年男性が仰向けに寝ている。
もしかしたら倒れているのかもしれないと思うほどに
無精髭の男の唇は白っぽい。
黒いTシャツの腹は動いているようだから、とりあえず生きてはいるのだろう。

座席は満席、
吊革につかまる半袖の肘が、隣と擦れ合う程度の混み具合。
そんな中、座席を占領して爆睡するこの男の様は、多分見ていてあまり心地よいものではない。
かといって、彼を蹴飛ばして退けるまではいかないにしろ、声をかけて起こし、たしなめるような者はおらず、
暗黙のマナーよろしく、
みな見て見ぬふり。

向かいの50代後半の女性は、不機嫌そうに、B4版くらいの大きさの板を、さっきから指先で叩いている。何してるのか吊革につかまる自分の肘越しに覗いたら、
iPadでポケモンGOをしていた。

はっと我に返り、周りを見まわせば、
車内の8割は50から60代、いや70代もいるかな、そんな年齢構成。
世の中これから、こんなふうになってゆくのだなあと思い、変な感慨に耽っていると、

先ほどの長椅子に寝そべる男性の右ポケットから、黒いスマホがカタンと床に落ちた。




静かな森に囲まれた、
美しい湖。
波一つない水面に、落ち葉がひとひら落ちる。
波紋はさあっと広がって、
しばらく後に、
また静寂に戻る。




僕は試しに、
この美しい湖畔の風景を
自らの手で汚してみようと思った。

何て事はない
ただ床に落ちた、スマホを黙って拾い、男性の足下に戻すだけなんだけど。

森は静けさを保ったまま、
このまま何千年もそこにあるような沈黙の美しさを保ちながら、
次の駅に向かって、
人々を運んで行く。


よく目を凝らしていれば、
見えてくる。
感じることができる。
ただ、見ようとしなければ、
それは一生見えないもの。

そんなものが、
この世界にはまだ、うじゃうじゃいます。
ポケモンじゃないけどね。



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