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澄んだ冬空

それにしても、

今日は空気が澄んでいた。

空はこの季節にしては珍しく、
なんていうか、ヨーロッパの石造りの教会の天井みたく、
地表の音を高い所で反射してくれるし、
陽光は、空気中の塵や細かい水に乱反射する事なく、
痛いくらいの明るさで降り注ぐので、
アスファルトに映る影は、いつもよりもシャープになり、
逆光の風景は柔らかい。
公園を散歩している茶色いトイプードルの背中の毛が、
その柔らかい光に照らされて
黄金色にひかっている。

冬という季節は、時にそんな色を見せてくれる。
普段は灰色にくすんだ冷たい風景だけれど、
だからこそ、ふと見せた光の暖かさは際立つものなのか。


学生服の僕は、その瞬間、
窓際の席で、テストの答案を書いていた。
中学の頃の話だ。
冬の光が、黒い制服の背中を温めている。
答案に映る自分の影の肩先から、
湯気のようなものが出ているのに気付き、
目を細めながら、ぼんやりと眺めた。

つまりは、服や身体の水分が温められて蒸発しているだけなのだが、
そんな理屈はどうだってよくて、
集団でいるのに、沈黙しているという、あの不思議な海に漂いながら、
自らの発する湯気の影が、虚空にたゆたうのを眺めるという行為に、
今思えば僕は、ちょっとした癒しを感じていたのかもしれない。

時計で測れば、ほんの数秒。
でも記憶の風景は今でも在り続ける。

そんな事、思いながら、
今は家族で公園から帰り道。



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