« 染み付いた夏 | トップページ | バッハとダシ汁 »

タクシーの幻想

先日の山梨旅行の話
甲府で酔っ払って10時に小淵沢へ到着。
ホテルは甲斐大泉駅の側なんだけど、
小海線は終電過ぎてしまっていて、
しょうがないから、暗闇にポツンとあるタクシー乗り場に待つ、黒いタクシーに乗り込むことにしました。
サラッとしたベッドのシーツみたいな座席に埋もれて、ホテルの名前を告げると、
60代、いや下手したら70いってるんじゃないかといった風貌の、その小柄な運転手は、白い手袋に握ったハンドルを右に回し、真っ暗な林にハイビームをぶつけながら坂を登り始めました。
無線に向けて、「412 大泉に向かいます。」と、一言。
僕はクッションにもたれて、左手の窓から、白く光る樹々の幹たちをなんともなしに眺めている。
対向車も無く、街灯もまばらな暗い山道を車はひたすら走る。
街中でこの時間、タクシーに乗ると大抵運転手は「今日は飲み会ですか?」だとか、「どちらからですか?」なんて話しかけてくるけれど、
運転手さん、一言も発せず、黙ってアクセルを踏む。
だんだんと、僕は変な気持ちになってきました。
このタクシーは、僕を乗せてどこへ連れて行こうとしているのだろう。
どこって、大泉のホテルに決まってるんだけど、
もしかしたら、この運転手
どっかヤバいところに連れて行こうとしてるんだとしたら、
っていう、そんな不思議な感覚。
たまに、信号機で止まると
運転手の耳の産毛が赤い光に照らされて、
顔が見えない分、色々な妄想の余地があるわけでして、
僕は、このタクシーが向かう先を
色々と思い巡らせることに、
いつしか夢中になっていました。

結局、
タクシーは、オーダー通り
八ヶ岳のホテルに到着。
振り返った運転手は、
にこやかな、人の良さそうな紳士でした。

タクシーが去った後、
空を見上げてみましたが、
あいにくの曇り空、
晴れていたら、降ってくるような星空が見えるはずでした。



|

« 染み付いた夏 | トップページ | バッハとダシ汁 »

ぼんやり日記」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 染み付いた夏 | トップページ | バッハとダシ汁 »