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どこかのだれかへ

まだ、楽器を弾き始めてまもない頃
大学オケの練習場所として使っていた二階の教室から
窓の外を見下ろして、道行く誰かを眺めながら
その並木道を歩く、どこの誰かも知らない人に向かって
音を届けるつもりで弾いてみたことがありました。
別にロマンチックな曲とかじゃなくて、
ある時それはト長調の音階であり、
或いは鈴木の教本についてるガボットだったり。
一人で黙々と練習するのは、昔から好きでしたが、
楽器ってのは、
きっと、伝えたいという願いを運ぶ道具なのかもしれませんから、
やっぱり、一人で弾いていても
何処か遠くの
もしかしたら何光年も先の誰かに
届く当てなんかなくったって
心の何処かで願いを込めて、
そうやって音を出しているんですね。

言葉の通じない道の草
桜の幹
地面を渡る小さな虫
高い空
地面

僕は今、ここにいます。

伝わる当てのない、
何処かの誰かに
あの頃の恥ずかしいくらいに不器用で無垢な僕は
こんな寒い夜でも、
届け届けと、
つたない音を紡ぎ出していたんでしょうね。

明日の朝、
目が覚めたら
そんな気持ちで
鳥たちのさえずりを
布団にくるまって、
こっそり聞いてみようかと思います。


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